とやま D’DAYS(2018年〜継続中)
富山県総合デザインセンターを拠点に、人や企業の交流を促し、新たなイノベーションを生み出すための取り組み
富山県・富山県総合デザインセンターが主催する「とやまD’DAYS」は、「会うことで生まれるデザイン」をキーワードに、デザインに関わる人や企業に、業種や立場を超えて会いに行くことができる交流イベントです。
富山県総合デザインセンター一帯を総合的なデザイン交流ゾーンとして国内外に発信するとともに、富山県内の先端ものづくり企業におけるデザイン活用や、デザイン思考による製品開発の推進を目的としています。
弊社はこの事業の企画・運営のサポートをしています。
背景
富山県では、デザインによるものづくりの振興に全国でもいち早く注目し、富山県総合デザインセンター(1999年創設)を中心に、デザイン性に優れた商品の共同開発や販路開拓の支援、 デザイン人材の育成などに努めてきました。
近年は激変する市場環境に対応すべく、デザイン交流拠点「クリエイティブ・デザイン・ハブ」やバーチャルリアリティのコンテンツ制作システムや大型スクリーンを使ったシミュレーションの環境を備えた「バーチャルスタジオ」を整備し、先端産業とデザインの融合や、異業種連携による新商品開発・新事業創出 をめざしています。
実施内容【2018年】
初年度である2018年は、8月27日から10月10日までの間、「気づきとデザイン」をテーマに、企画展、オープニングイベント、フォーラム・オープンHUB、見学バスツアーを開催しました。
1.企画展「気づきとデザイン」
普段見慣れているものでも、視点を変えると違って見える。思考がさまざまな方向に拡散していく・・・。長いものづくりの歴史によって集積され、かたちづくられてきた「技術」「知恵」「素材」「風土」は、同時に“次世代産業を創造するDNA”と捉えることもできるでしょう。
伝統や風土を、視点を変えて見ることで得られる「気づき」の中に、次のイノベーションの可能性があるのではないでしょうか。
そのような考えをもとに、富山県にゆかりのある企業やプロジェクトに協力をいただき、多様な視点から「気づきとデザイン」の関係を考察する企画展を開催。期間中、約1200名の方に来場いただきました。
2.オープニングイベント
オープニングイベントとしては、セレモニー、記念セミナー、ワークショップを行いました。
記念セミナーでは、「二人が挑むテキスタイルデザインの世界」をテーマに、世界的ファブリックメーカーのデザインも手がける鈴木マサルさん、テキスタイルデザイナーの氷室友里さんを講師を迎え、ライフスタイルの変容とともに活用の場が大きく広がるテキスタイルの世界について、お話をいただきました。
また、記念セミナーに登壇いただいたお二人と参加者が協働し、新しい富山のテキスタイルを考えるワークショップも同時に実施。参加者と登壇者がコミュニケーションをとり、その場でデザインが生み出されるという臨場感あふれる貴重な機会となりました。
3.記念フォーラム・オープンHUB
メインイベントとなる記念フォーラムでは、会場を株式会社能作さんに移し、「デザインの可能性、領域を越えて挑む世界」「デザインのニューエイジ、エンジニアリングデザインの世界」をテーマに、各分野のデザイン専門家をゲストにお招きし、対談と質問形式での討論を行いました。
また、デザイン交流拠点「クリエイティブ・デザイン・ハブ」を特別に開放してのイベント「オープンHUB」を開催。高岡の伝統産業の現場を見学したのち、第一線で活躍するデザイナーをゲストに迎えた少人数によるディスカッション・ワークショップを行い、より実践的な気づきの共有の場を目指しました。
4.見学バスツアー
県内の先進的なものづくり企業や研究機関をめぐり、発想の飛躍を促すテクノロジー体験をするツアーを行いました。
見学先:富山県総合デザインセンター、株式会社ウイン・ディー、株式会社能作、株式会社ゴールドウイン、富山県ものづくり研究開発センター
≪とやまD’DAYS 2018 開催概要≫
- 日時
- 2018年8月27日(月)〜10月10日(水)
- 会場
- 富山県総合デザインセンター /
株式会社 能作 - テーマ
- 「気づきとデザイン」
- 講師
- 川上典季子(デザインジャーナリスト)、川崎和男(デザインディレクター/医学博士/大阪大学名誉教授、名古屋市立大学名誉教授)、久保田善明(富山大学都市デザイン学部都市・交流デザイン学科 学科長・教授)、株式会社クリエイティブボックス、小柴尊昭(富山もようプロジェクトプロデューサー)、鈴木マサル(テキスタイルデザイナー/東京造形大学教授)、須藤玲子(テキスタイルデザイナー/東京造形大学教授)、澄川伸一(大阪芸術大学教授/プロダクトデザイナー/澄川伸一デザイン事務所代表)、武井洋平(エンジニア/研究者)、畠山耕治(金属作家/金沢美術工芸大学教授)、氷室友里(テキスタイルデザイナ−)、松山祥樹(プロダクトデザイナー)、吉泉聡(TAKT PROJECT代表/デザイナー/クリエイティブディレクター)、吉田真也(プロダクトデザイナー)
- 協力企業
- 株式会社クリエイティブボックス、株式会社ゴールドウイン、富山もようプロジェクト、日南グループ(株式会社ウイン・ディー)
実施内容【2019年】
2019年は「コアコンピタンス(強み)」をテーマに、11月6日から12月27日までの期間、企画展、オープニングイベント、イノベーション講座、企業見学ツアーを開催しました。
1.企画展「変容するデザインの役割」
他社や異分野との接触や協働は、自社の「強み」を自覚する機会にもなります。これからのものづくりにおいて「オープンイノベーション」の考え方は重要であり、社会が大きく移り変わる時代には特に有効な手段と言えます。そこにおけるデザインの役割はどう変容するのか。
ロボットやモビリティといった先端テクノロジー分野を例に、企業が蓄積してきた「コアコンピタンス(強み)」を新しい社会の「創造」に導くデザインの役割について考察する企画展を開催しました。
2.オープニングイベント「新しい社会を支えるテクノロジー×デザイン」
“一人乗りの乗り物”としての電動車椅子「WHILL」、“愛されるためだけに生まれてきた”ロボット「LOVOT」。
二つのプロダクトの開発デザイナー、塚本皓之さん、根津孝太さんをお招きし、コアコンピタンスやオープンイノベーションの視点から、ものづくりの最先端にある革新のヒントを探るトークイベントを開催。
開発経緯やデザイン思想などについて、実際に開発を担当したお二方から伺うお話は、大変興味深いものでした。
またセミナーの後には「WHILL」、「LOVOT」の試乗・体験会を実施し、プロダクトの魅力、優れた点などを実際に体感していただきました。
3.イノベーション講座
先端テクノロジーとデザインの融合による社会変革の可能性が高いモビリティ分野を主な例とし、第一線で活躍する方々をお招きしてのイノベーション講座。2日間にわたり、講師・参加者の皆さんとともに企業の強みと社会を変えるデザインについて考察しました。
また、2日目の後半には、県内のものづくりリーディング企業の方とともに、オープンイノベーションやものづくりの今後のあり方を探るカンファレンス(懇話会)を開催。
自社の技術を別の分野に転用したり、他社と協働するなど、皆さんが取り組んでおられる「強み」を生かす工夫や発想の種を知る機会となりました。
4.企業見学ツアー
富山県内の先進的なものづくり企業をめぐり、オープンイノベーションの種を探るツアー。
見学ツアーは昨年より開催していますが、今回は、工作機械から食品、梱包資材、繊維・服飾とより幅広い分野の企業を訪問。あらゆる業種において、デザインのヒントやチャンスがあることを感じられるツアーとなりました。
見学先:サクラパックス株式会社、株式会社 源 ますのすしミュージアム、株式会社スギノマシン、株式会社アートジョイ
≪とやまD’DAYS 2019 開催概要≫
- 日時
- 2019年11月6日(水)〜12月27日(金)
- 会場
- 富山県総合デザインセンター
- テーマ
- 「コアコンピタンス(強み)」」
- 講師
- 青山尚史(ダイハツ工業 カーデザイナー)、小菅隆太(経済産業省製造産業局「空飛ぶクルマプロジェクト」コミュニティマネージャー)、塚本皓之(WHILLデザイナー)、坪井浩尚(プロダクトデザイナー)、森口将之(モビリティジャーナリスト)、根津孝太(znug design代表/LOVOTデザイナー)
- 協力企業
- IAAZAJホールディングス株式会社、株式会社能作、サクラパックス株式会社、株式会社 源 ますのすしミュージアム、株式会社スギノマシン、株式会社アートジョイ
実施内容【2020年】
第3回目となる2020年のテーマは「sensibility−感性の時代−」。
自然災害、新型コロナウイルスなど、予測困難な現実を前に、一人ひとりが羅針盤としての「感性」を育てることがますます重要となる時代。とやまD'DAYS2020では、アート、テクノロジー、サイエンスなどの多様な分野で活躍する方々との交流や体験イベントを通じて、感性を刺激し合うことを目指し、3日間のイベントを開催しました。
2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当日の会場の定員を制限するとともに、プログラムの一部をオンライン配信しました。
1.オープニングトーク
私たちが直面する「現実」は、誰もが体験・共有可能なものとして捉えがちです。しかし、インタラクティブアートやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)は、むしろ「現実」こそが虚ろな存在であることを映し出します。
オープニングトークでは、「私たちが感じる、新しい世界」をテーマに、お二人の講師とともに、新しい現実世界における人間の感性や社会の可能性を考察しました。
2.カンファレンス
カンファレンスでは、アート、テクノロジー、サイエンスなどさまざまな分野で活躍する講師を招き、キーノートスピーチ(基調講演)、トークセッション、交流会を開催しました。
3.体験ツアー
とやまD’DAYSのオープニングに合わせ、富山県総合デザインセンターと株式会社能作を回る体験ツアーを開催しました。
富山県総合デザインセンターで、3Dプリンター等を活用した商品開発を学ぶとともに、とやまD’DAYSのプログラムであるオープニングトークとVR体験。能作では、ものづくり現場の見学と鋳物製作を体験。ツアーを通じてデジタルとアナログの両方のものづくりに触れていただく機会となりました。
4.VR体験
県総合デザインセンターのヴァーチャルスタジオを舞台に、最先端のVR技術を使ったアート作品の体験会を開催。多くの方にご参加いただきました。
≪とやまD’DAYS 2020 開催概要≫
- 日時
- 2020年9月4日(金)、5日(土)、6日(日)
- 会場
- 富山県総合デザインセンター
- テーマ
- 「sensibility−感性の時代−」
- 講師
- 川原隆邦(和紙作家)、クワクボリョウタ(アーティスト/情報科学芸術大学院大学[IAMAS]教授)、平瀬謙太朗(クリエイティブ・ディレクター)、藤井直敬(医学博士・脳科学者/一般社団法人 XRコンソーシアム代表理事/デジタルハリウッド大学大学院 教授/東北大学医学部特任教授)、松山真也(プランナー、デザイナー、エンジニア、siro Inc.代表)、ミヤケマイ(美術家)、山口 周(独立研究者、著作家、パブリックスピーカー)、吉泉聡(TAKT PROJECT Inc.代表、デザイナー、クリエイティブディレクター)、吉田真也(プロダクトデザイナー、SHINYA YOSHIDA DESIGN代表)
- VR体験
- 株式会社ハコスコ、GRINDER-MAN(パフォーマンスグループ)、evala(音楽家/サウンドアーティスト)
- 協力企業
- 株式会社 能作